LOH症候群の背景には、さまざまな病気の存在も否定できないのだ。本来、生き物としては20歳くらいまでに子どもを作って、あとは人生の終わりを待つのがベストなのかもしれないが、現代人はそうはいかない。テストステロンが減ってきている中で、仕事や子育てなどの活動をするのだから、無理がかかるのも当然だろう。
さらに、男性と「セックス」の関係は、女性とセックスの関係より複雑だ。つまり男性は「いくつになってもペニスに振り回されている」から。男性が自分の性器を「息子」とよく言うが、息子と言いながらも実際には支配されている。
「それはどうしようもないんですよ。実際、EDが治ると、男性は性に対して自信を持つようになる。自信を持つようになるとQOL(生活の質)が上がるんです。やる気が上がって仕事も充実する。性は生きる活力と同じなんでしょうね。個人差はありますから、60歳であきらめている人もいれば、90歳で性に執着している人もいる。でもやはり後者のほうが元気です」(井手教授)
こんなこともあったとか。
「80歳の男性が『60歳の彼女ができたけど5年以上、勃起していない。彼女に“ふにゃちん”は嫌だと言われた』と相談に来ました」
では、テストステロンを維持するためには、どうしたらいいのだろうか。
日々、ウォーキングなどの運動をして肥満を防ぎ、バランスのいい食事をして、たとえひとりでも勃起・射精をしたほうがいいという。スポーツ観戦なども競争意欲を盛り上げることでテストステロン増加に一役買うようだ。
「テストステロンを注射剤で補充することができます。最近、なんだか心身が不調だと感じたら、気軽に泌尿器科に来ていただきたいです。性欲はあるけどEDという場合には、バイアグラのような薬も処方できますから」(同)
◆性の充実勘違い 夫婦で楽しめず
「一般的に50代以降の男性は、地位が上がり、責任が重くなる一方で体力は落ちてくる。その中で、性に対するスタンスは、人によって3タイプくらいあると思いますね」