「想像力、思いやりなどの客観性認知能力は、4歳から8歳のころに育ちます。これらの能力は、外界認知を司る小脳の発達と深くかかわっていると考えられ、小脳の発達臨界である8歳までに経験によって獲得することが重要です。つまり、以降にその力を育てようと思っても残念ながらなかなか難しい。4歳から8歳の頃に、親とのコミュニケーションが不足したり、親がたった一つの正解を押し付けてきたりすると、客観性認知が著しく欠けてしまったまま大人になることがあります」(黒川さん)

◆やってもやっても認めてもらえない

 意外なことに、モラハラをする男性には、高学歴で医師や弁護士、経営者など、社会的地位の高い人が多い傾向にあるという。仕事ができる人が多く、外面も良いため、プライベートの友人は少ないものの、仕事を通じた関係性は良好である場合が多い。

 相手が自分のテリトリーに入ってきた時に初めて本性が現れるため、表面的な付き合いの上ではモラハラ気質を見抜くことが難しい。そのため、結婚前にモラハラの予兆に気づけない場合が多いのだ。

 モラハラに関する相談実績も多い夫婦問題カウンセラーの高草木陽光さんは次のように指摘する。

「100点を取らないと認めてもらえないという教育環境で育っていたり、親の押し付けが強かったりして、実は大きなコンプレックスを抱えているという人が少なくない。『やってもやっても認めてもらえない』という幼いころの経験から、自己肯定感がとても低い傾向も見られます。だから常に自分が誰かの上位に立つことで、歪んだ安心感を手に入れたがる。その“誰か”が、一番近い相手である妻で、矛先が向かってしまう」

 前出の谷本さんの分析も同様だ。

「モラハラをする人は、いわば大人の仮面を被った幼児。究極の赤ちゃん的な甘えで、『僕の言うことを聞いて!僕に構って!』という言葉が、モラハラという言動に置き換わっている」

 Aさんの話を思い起こすと、元夫の人格否定言動の数々は「誰かに認めてもらいたい」という欲求の裏返しにも思える。

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