授業準備を支援/「JUST10min」はTongaliアイデアピッチコンテストのTongali賞など複数受賞。デジタル化により、指導案の入力を省力化するだけでなく、統一フォーマットで共有や検索がしやすいシステムになっている
授業準備を支援/「JUST10min」はTongaliアイデアピッチコンテストのTongali賞など複数受賞。デジタル化により、指導案の入力を省力化するだけでなく、統一フォーマットで共有や検索がしやすいシステムになっている

 杉江さんは大学院進学を決めていたため、小学校の教壇に立つまでの学生の期間をこの問題に使えないかと考えた。コロナ禍でさまざまなオンラインセミナーに参加するなか、半年間で事業を立ち上げる、名古屋市主催のスタートアップ支援プログラムを知り参加。そこで得た仲間と「JUST10min」を開発し、同プログラムのコンペで優秀賞を受賞した。

同級生が苦しむ姿

 アプリは4月リリースが目標。「起業家の卵」になった杉江さんだが、教員志望に変わりはないという。

「教員の仕事そのものは魅力的です。それだけに、それ以外の理由で後輩たちが教職をあきらめたり、教職に就いた人が休職や退職に追い込まれたりする状況を変えたいです」(同)

 いまや社会問題となっている学校の長時間労働。小学校の3割、中学校の6割の教員が過労死ラインとされる月80時間以上の残業をしている。毎年、約5千人が精神疾患で休職し、教員採用試験の倍率も低下の一途をたどっている。こうしたなか、教員志望者を中心に学生たちが立ち上がり、学校の労働環境改善のため起業する動きが出始めている。

 18年12月に設立された、教員を助ける学生団体「Teacher Aide(ティーチャー エイド)」は、その源流の一つだ。当時、京都教育大学4年(現・京都大学大学院生)の櫃割(ひつわり)仁平さん(26)が同級生と立ち上げた。

 櫃割さんは言う。

「当初は綿密なプランがあったわけではありません。僕は1年留学したので同級生が先に教員になりました。過重労働に苦しんでいる様子に、いてもたってもいられず団体を作りました」

 ティーチャーエイドでは教員の働き方の勉強会や講演会などを開催。3年を経て現在、全国に35の支部があり、約300人の会員がいる。

公務災害の抑止力に

 東京学芸大学4年で、現在休学中の石原悠太さん(25)は初期からのメンバーだ。活動を通して、教員だった夫を過労死で亡くした遺族の話を聞く機会があった。石原さんは言う。

「公務災害の申請の際、勤務時間の把握と認定に大変苦労したと聞きました。そこで、スマホの位置情報機能を活用し、出退勤時間を自動記録するアプリ『Wormat(ウォーマット))』を仲間と開発。昨年4月にリリースしました」

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