長い間、多くの学校にタイムカードはなかった。公立校教員は残業代がつかない給与体系になっているため、厳密な時間管理がされてこなかったのだ。だが、ここ数年、働き方改革の一環で学校へのタイムカード導入が進められている。
「ところが、学校にタイムカードが入っても、管理職による改ざんや過少申告の強要。果ては教員自身が面倒くさいと過少申告する話も耳に入ってきます。それでは公務災害の際、適正な判断はなされません。そうしたときにこのアプリが役立ちますが、それ以前に、このアプリの存在が、公務災害を招かないための『抑止力』になることを願っています」(石原さん)
学校現場を助けたいと起業するのは、教員志望者に限らない。埼玉県戸田市では、全国でも珍しい、学生インターンによる支援の取り組みが始まっている。この仕組みを開発したのは、デジタルハリウッド大学3年の田中あゆみさん(22)が代表を務める、一般社団法人「lightful(ライトフル)」だ。前出の石原さんが副代表を務める戸田市内の一般社団法人と連携し20年から実施している。
田中さんは言う。
「生徒一人一人にスポットライトの当たる教育を理念にライトフルを設立しました。それには、教員が子どもたちと向き合える時間の余裕がまず必要。支援策としてインターン派遣事業『TEST』を考えました。教員志望の学生にとっても1回の教育実習だけで教員になることの不安は大きく、もっと学校現場に入りたいというニーズがありました」
昨年12月下旬、戸田市立戸田第一小学校を訪ねると、5年1組の理科の授業に学習院大学4年の西脇春花さん(21)がインターンで入っていた。西脇さんは昨年に続き2度目の参加で、9~3月に週1日携わる。
国は抜本的な解決を
この日は水溶液の実験と考察がテーマ。教室の前で教科担任の神田聡美教諭が授業を進める間、西脇さんはひとりひとりの児童のノートを見ながら「どうしてそう思ったの?」「前の授業では何をしたかな?」と声がけをしていた。