中国政府の「ゼロコロナ政策」の下、北京冬季五輪は開幕する。市民の自由を抑圧して開く祭典は何をもたらすのか。AERA 2022年2月7日号は、阿古智子・東京大学大学院教授に聞いた。
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北京五輪で注目したい点は、少し皮肉を込めて言えば、コロナ政策でしょうか。実際に感染者数を抑える効果を上げてはいる。「監視国家ならではのパフォーマンス」を見せていただけるのではないかと思います。
感染爆発の最中という非常時とは言え、「ゼロコロナ」の下、あまりに強硬な方法による自宅待機などで市民の自由を奪っている。これほどの我慢を強いてまで五輪をやる必要があるのかとの批判もあり得るはずですが、今の中国はそういう議論さえも封じ込めてしまう。そこが大きな問題です。
知識人たちへの締め付けも起きています。人権派弁護士として活動してきた唐吉田さんもその一人。昨年、日本に留学中の娘さんが結核を患って自宅で倒れ、日本の病院で意識のない状態が続いています。訪日しようとした吉田さんに日本政府はビザを発給しましたが、中国当局は「国家安全に危害を加える可能性がある」として出国を許可せず、今は拘束しています。
また中国人留学生の中には、中国のSNSアプリ「WeChat(ウィーチャット)」で興味を持った「政治的な記事」を友人とシェアしただけで、故郷の両親に連絡がいったケースもあります。「そこまで監視されているのか」と気づき、強い不安を持つ留学生は多いです。