「前述したように、あくまで一定の前提を置いたうえでの結果ですので、今後、運営の効率化といった対策を講じれば値上がり幅を抑えることもできます。ただし、注目してほしいのは、18年にまとめた前回の調査に比べ、必要な値上げ率の全体平均が36%から43%に上がった点。北海道や東北、北陸地方や、人口が少なく、人口密度も低い自治体の値上がり率が高い傾向がみられました。また料金が最も安い自治体と、最も高い自治体の格差も、前回の調査で9.1倍だったものが24.9倍に広がると見込まれます」

 格差が広がったのは、人口や料金収入の減少といった事業環境の悪化スピードが足元で加速していることを示す。

 ランキング上位の自治体の危機感は強い。女川町の担当者は言う。

「推計はあくまで一定の前提のもとでの結果と受け止めていますが、担当者の間でも、料金値上げや施設の統廃合、ダウンサイジングといった政策の見直しを話し合っています。値上げの必要性は認識しています。昨年までに災害復旧作業をようやく終えたばかりで、これから具体策を練っていきたい」(建設課)

 南阿蘇村は、この春に値上げする方針をすでに決めている。葛巻町も、昨年3月にまとめた水道事業に関する町の長期戦略「水道ビジョン」で、「5年をめどに料金改定の検討を行う」と明記した。

 水道事業だけでは、採算が取れない自治体が多いのが現状だ。総務省の資料をもとに、水道事業の経営指標の一つ、「料金回収率」の値が上位と下位の自治体をそれぞれランキングした。

(週刊朝日2022年2月11日号より)
(週刊朝日2022年2月11日号より)

 料金回収率とは、1立方メートルあたりの給水で得られる料金収入「給水収益」を、同じ量の給水にかかる費用の単価「給水原価」で割ったもの。給水に必要な費用を料金収入でどれだけ賄えるかを示す。

 100%を下回ると、給水にかかる費用が料金以外の収入で賄われていることを意味する。反対に、100%を上回れば、料金収入が、必要な経費を上回っているということだ。料金収入だけで足りなければ、「企業債」と呼ぶ債券を発行したり、一般会計などほかの会計から繰り入れたりして、必要なお金を手当てしないといけない。

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