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 全国で水道料金が相次ぎ引き上げられている。古くなった施設の更新時期が集中することが主な理由だが、住民に不人気な値上げを避けてきたツケが噴き出した面も。2043年までに、自治体の9割が値上げを迫られるとの予測もある。

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 福岡県飯塚市は今年1月、水道料金を平均35%値上げした。同市にとって、値上げは約20年ぶりという。

 新しい料金が実際に適用されるのは4月の請求分からだが、月あたりの水使用量が20立方メートルのモデルケースの場合、改定後は従来の2266円から3058円へ、792円値上がりする。

 年間では9504円の負担増になる。

 水道代を値上げする自治体が相次いでいる。前橋市や岐阜県本巣(もとす)市も、4月から引き上げる予定だ。松山市も1月25日、来年4月から平均12.64%値上げする方針を示した。昨年も、横浜市や埼玉県川口市などが値上げに踏み切った。

 厚生労働省や公益社団法人の「日本水道協会」によると、家庭向けの水使用量20立方メートルあたりの水道料金は、2019年度に全国平均で3298円と、10年前の3096円から6.5%増えた。値上げが相次ぐのはなぜか。水道経営に詳しい近畿大の浦上拓也教授(公益事業論)がこう解説する。

「高度成長期に造られた水道施設が更新時期を迎え、改修や新設の費用が必要です。同時に、人口減や節水機器の普及で水道料金収入は減っている。水道経営は、料金収入で運営経費を賄う『独立採算』が原則。収入を増やすために値上げの必要に迫られているのです」

 前号で紹介したように、水道管などの水道設備は古くなり、老朽化が要因とみられる事故も目立つ。浦上教授は言う。

「地方の小さな自治体ほど、人口減少の影響は大きい。それだけ水道経営も厳しくなる。人口減はさらに加速する見通しで、都市と地方、大規模な自治体と小規模な自治体の水道料金の格差はもっと広がるでしょう」

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