宮崎県西都市をはじめとする値の低い上位は、水道事業者のうち、給水人口が101人以上5千人以下の「簡易水道事業」の区分けに相当する、規模が比較的小さなところが多かった。
1300余りの事業者のうち、4割が100%を割る。つまり、4割の事業者が料金収入だけでは運営経費を賄えない「原価割れ」の状況だ。また、料金回収率が高くても、必ずしも安心はできない。前出の浦上教授はこう指摘する。
「水道料金はもともと、市民などから安く抑えるよう求める声が強い。必要な設備の更新を先延ばしして投資を抑え、料金を安く維持してきた面がある。国内の管路(水道管)更新率が低調なのは、その表れです。こうしたツケが今後、料金の値上げという形で表面化する可能性もあるのです」
将来、設備の改修や更新のための投資を迫られたとき、料金回収率が一気に悪化する可能性も捨てきれないという。
コロナの感染拡大で行った料金減免の影響も懸念される。
現場を担う職員の数も減っている。ピークだった1980年代の7万5千人前後から3~4割減り、足元では5万人を割り込む。小さな自治体では数人の職員で支えているところも珍しくない。
水道事業に携わる職員の高齢化も進む。
全体の平均年齢は44歳で、50歳以上の自治体が100余りある。施設や設備を維持する技術やノウハウをどう引き継ぐかが課題だ。職員の平均年齢が高い事業者は左上の表にまとめた。
職員の給料にも、自治体によって差があることがわかった。一番安い鳥取県伯耆(ほうき)町は、基本給、手当を合わせて月収22万9千円。最も高い山梨県北杜市とは4倍超の開きがあった。
水道事業を巡る環境は厳しさを増すばかりだが、対策に乗り出している自治体もある。
香川県は、18年に県内16市町の事業を統合し、全国で初めて「1県1水道体制」を敷いた。岩手県では14年に北上市や花巻市、紫波町の水道事業を統合。浄水場や取水場といった施設の統廃合や、運営体制の効率化を共同で進め、収支の改善をめざしている。