「バナーは肖像権の関係で、写真をプリントするのはNGで、名前のロゴや似顔絵、シルエットなどでデザインを起こします。羽生選手の衣装の色使いやデザインをモチーフにしたバナーを作ったことも。横断幕屋などの業者さんに依頼して作ることもできますが、私はひと針ひと針、自分の手で刺繍しながら作るのが信条。画面越しでも、きっと応援の力が羽生選手に伝わると信じています」(鈴木さん)
羽生選手ファンの間で、目下交わされている話題が、世界初となる4回転半ジャンプの行方、そして引退時期だ。羽生選手は、12月の全日本選手権で、「6分間練習前から泣きそうで……。あと何回、こういう景色が見られるんだろう」と意味深なコメントを残した。「日本で羽生選手を観られるのは、これが最後かもしれない」という思いで会場に足を運んだファンも少なくないという。羽生選手は以前から、引退をちらつかせる発言をしているだけに、北京五輪の成績のみならず、その進退も気になるところだ。田中さんは言う。
「スケートというのは、選手生命の短いスポーツです。お気に入りの選手が第一線で活躍できるのは数年ですし、試合数も限られている。その限定感にも、多くの人が惹きつけられるのです」
北京五輪が、歴史的瞬間となるかどうかーー。結果がどうあれ、難題に果敢に挑む勇姿そのものが、多くの人の胸に刺さるに違いない。(松岡かすみ)