羽生結弦選手
羽生結弦選手

 SNSが発達した現在、どこからか情報は漏れてしまうもの。ただ、長年のファンは、こうした情報などを得ても、SNSで発信することは決してしない。あくまで信頼できるファン同士が集った時などに、ひっそりと情報交換するのが常だ。中でも嗅覚を研ぎ澄ませているのが、次回の大会の開催予定地に関する情報。会場周辺に宿が少ないような場所では、チケット以上に宿の手配が困難なこともあり、選手の宿泊場所も予想した上で、いち早く宿を取るのだという。こうしたファン同士の繋がりは、観戦ツアーへの参加などを通じて徐々に広がり、コアなファンコミュニティーが形成されていく。

「とはいえ、コミュニティーメンバーの“入れ替え”は絶えず行われるものです。スケートそのものに興味がなくなったり、特定の選手だけのファンの場合には引退とともに試合を見なくなる人も。追っかけが経済的に苦しくなる人もいます。というわけで、結局最後まで残るのは、筋金入りのスケートファンということになります」(田中さん)

 現地で観戦し、追っかけしてきた長年のスケートファンだが、コロナ禍によって応援スタイルにも変化があった。国内試合でいえば、会場でも投げ込みのプレゼントや歓声は禁止。羽生選手が滑った後のお決まりの光景である“プーさんの雨”も、今はお預けだ。飛沫防止対策からも、スタンディングオベーションやバナーを使った、“声を出さない応援”のみに絞られている。

「12月の全日本選手権でいえば、現地での観戦を控えていた人も多いようで、チケットは比較的とりやすかった。最近はライブ配信や見逃し配信など、配信コンテンツが充実していることも、チケットの取りやすさに関係しているかもしれません」(田中さん)

 オミクロン株が拡大する第6波の最中、仲間とリアルに集って応援しづらい現在。言わずもがな北京五輪はチケットの一般販売が行われないため、テレビや配信を通じての観戦だ。そんな中、来る  10日のフリー演技は、「仲間10人とオンラインビデオ通話で繋がって観戦します」というのは前出の鈴木さんだ。10人の中には、有給休暇をとってオンライン観戦に臨む会社員もいるという。全員が、過去に羽生選手を現地で応援した際にも使用した、鈴木さん特製の応援バナーを手に持って観戦予定。すでに準備万端だ。

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