飼い主さんの目線で猫のストーリーを紡ぐ連載「猫をたずねて三千里」。今回、話を聞かせてくれたのは神奈川県在住の主婦、章恵さん(50歳)。3匹の猫と暮らしていますが、実は、もともとは犬好きで猫を飼うことになるとは思ってもみなかったそうです。そして3匹は、なんと中東と中央アジア生まれ。すべての始まりとなった19歳の猫を中心に話してくれました。
【写真】てんかん持ちのママ猫の頭を舐めてあげるキジトラのきっちゃん。優しい息子に育ちました
* * *
現在、私は19歳の猫奴(通称やっこ)、その息子の17歳の吉右衛門(通称きっちゃん)、13歳のタラの3匹の猫と神奈川の自宅で暮らしています。
3匹とも日本的な名前ですが、実はカザフスタンとカタール出身です。
夫は海外赴任が多く、私は20代で結婚して以来、タイ、ベネズエラ、カザフスタン、カタール、バーレーンに、一緒に行きました。そんな生活の中で3匹の猫と会ったのです。猫たちは日本と海外を行き来しながら、気づけば、シニア世代になりました。
やっこは私が人生で初めて飼った猫です。すべてを語るにはとても時間が足りませんがちょっと、振り返ってみます。
◆極寒の地で出会った賢い猫
やっこと会ったのは、2003年に訪れたカザフスタンです。
私は元々犬が大好きで、カザフスタンで新たに犬と暮らしたいと思っていました。でもいざ行ってみると予想以上の僻地で、周囲にはペットショップやシェルターもありません。
そんな中で、日々目にする猫が気になりました。私たち夫婦が暮らすホテルに住み着いている猫です。ホテルの周りには他の猫がいるのに、なぜ、この猫だけホテルに入れて、ご飯がもらえるの?……見ていると、とても賢く、わきまえている。たとえば、排泄の時は、自動扉を自分で開けて出ていました。その賢い猫がやっこでした。
仲良くなりたくて、やっこの寝床から(一階の)私の部屋まで茹でたササミを点々と置いて、呼び込みました(笑)。
しばらくして、敷地内にビルが建ち、私たち夫婦はそちらに移ることになりました。上階だとやっこが外に出たら戻ってこられないだろうな。そう思った私は、ビルで“完全室内飼い“をしたいとホテルに申し出て、うちの家族にすることにしたのです。日本から猫トイレと砂を送ってもらい、トレーニングをしました。