頭のいいやっこは、私たちの新たな部屋に慣れて、ごはんもよく食べました。しかし。「たくさん食べて太ったね」なんて思っていたある日、子を産んだのです。全部で6匹。私は猫を飼うのが初めてで、びっくり。

ママになった猫奴。子猫は6匹産まれた(提供)
ママになった猫奴。子猫は6匹産まれた(提供)

 残念ながら1匹は亡くなりましたが、5匹はすくすく育ち、譲渡先が見つかりました。でも、1匹が里子に出した先から戻って、行く場がなくてさあ大変。それがきっちゃんです。

 すると、子猫のかわいさにほだされた会社の人が、「2匹くらいいいじゃないか」とホテル側に交渉をしてくれて、きっちゃんもわが家の猫になることができたんです。

カザフにて。犬派の章恵さんも猫奴親子に夢中に(提供)
カザフにて。犬派の章恵さんも猫奴親子に夢中に(提供)

◆ 避妊と去勢のために荒野をひた走り 郡の家畜診療所へ

  忘れられないのは、避妊・去勢の手術です。周囲には日本にあるような(犬や猫用の)動物病院がない。調べると、住んでいる郡に、ラクダや馬等のための公的家畜診療所があることがわかりました。

 通訳してくれる人と一緒に、2匹を車でその施設に連れていったのです。何もない荒野を1時間半ほどひた走ると、ぽつんと建物が現れました。

「犬も猫も診たことがないが、体重で麻酔の量を決める」

 そう言われても選択肢がほかになく……。診療する部屋からギャーッと声が聞こえてきて、ハラハラ。入院もなくその日のうちに返されました。

 きっちゃんのお尻にはヨードチンキが塗られただけ、やっこのお腹は縫い目が“ぼこぼこ”。どうしたらこうなるの?その姿を見て、大事にしなきゃと思ったものです。一週間後に抜糸し、落ち着いた日が訪れました。

◆ 極寒から灼熱の国へ、犬と猫が仲間入り

 避妊と去勢をした約1年後、やっこときっちゃんを連れて日本に一時帰国しました。

 他国への移動や、日本への出入国が楽になるように、マイクロチップが導入されるタイミングに合わせて帰国して、マイクロチップを入れたのです。2匹は、成田で初めてチップを入れた猫として、カザフに戻りました。

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やんちゃすぎて家で飼うことになった猫