母を見送って1年がたったころ、はたと「このままじゃ母をしのぶお客さまを呼べない。片見分けもできない。本気出さないと……」と思った彼女。家庭力アッププロジェクトを知ったのは、母の一周忌の数日前でした。
プロジェクトがはじまると、ダイエットのビフォー・アフターショットのごとく、全部屋と全収納の“ビフォー”を撮影。現実を客観視したら家の“メタボ化”の原因、不用品を家から出します。さらに理想の暮らしを細かく言語化します。過去の物に引っぱられず、本当に住みたい家にしていくために。
彼女のゴールは、収納された遺品を一度全部出し、処分する物は処分、譲る物は譲る、活用する物は飾るなどして、いまここで暮らす自分たちの物がきっちり収納された部屋。家族にも片づけの協力を申し出ました。
あらゆる収納から母の「かわいい」コレクションが見つかりました。
「何でこの収納にこれ?って物が、どんだけあるねんってほど出ました。ユニークな母らしいです」
100年前のお宝から200枚近くあるタオルまで。私がほほ笑ましいと思ったのは洗濯ネットです。かわいい柄のものが30枚もありました。
順調そうに見えた物の処分が、しばらくすると停滞気味に。仲のよかった妹との間にいざこざが頻発しているというんです。
「私が仕事へ行く間に収納から出した物が、ほとんど戻されたんです。『お姉ちゃんはわかってない。もう勝手に出さんといて』と言われました」
妹には片づけの手順を伝えているのに、片づけても、片づけても戻されているような……。
彼女はFacebookグループに焦る気持ちを投稿しました。「私も焦ってるよ」と共感する人、「遺品はいったん全部お母さんの部屋に置いたらどうかな」とアイデアをくれる人、「言うのは簡単なのですが、妹さんと片づけのタイミングが違うだけかもしれない」と寄り添う人。たくさんコメントが来ました。
思うように事が進まないとき、責任感が強い人ほど「私がダメなんだ」と自分を責めてしまいがちです。そういうとき、「私つらいんだな」とただ受け止めたり、アウトプットすると俯瞰(ふかん)して少し進めたりします。彼女は同期を頼りながら問題を整理しました。