5000件に及ぶ片づけ相談の経験と心理学をもとに作り上げたオリジナルメソッドで、汚部屋に悩む女性たちの「片づけの習慣化」をサポートする西崎彩智(にしざき・さち)さん。募集のたびに満員御礼の講座「家庭力アッププロジェクト®」を主宰する彼女が、片づけられない女性たちのヨモヤマ話や奮闘記を交えながら、リバウンドしない片づけの考え方をお伝えします。
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case.17 姉妹バトルを経て見つけたゴールは「あいまい部屋」
父+妹/病院経営
片づけとダイエットは意外に似ています。今の部屋は、過去の自分や家族がつくった姿。昨日飲み切った空のペットボトル、サイズアウトした子ども服、物が「過去」になったらすぐ出して、ゼロに戻すのが家をメタボにしないこつだったりします。
物を出すときは入れるときより心に負荷がかかります。「今やりたいこと」を優先したい思いや物への執着を捨てないと手が止まるからです。
何を出すかは自分との相談ですが、勝手に触れない家族の物はちょっと大変。故人の物なら、ただ手放せばいいというものでもありません。今回は、お母さんの遺品を整理した女性のお話です。
元気で社交的なその女性は目標にストイックな行動派。若いころは、夢だった仕事に就いて海外で暮らし、帰国したあとは柔軟に方向転換。家業の病院を継ぎ、仕事に生きる人です。
母ががんと診断され、自宅介護が始まったのは6年半前。最期の2年は全介助となり、介護に専念する妹とともに通院治療と日々のケアを続けました。
太陽のように明るく自由な母がいなくなると家にはぽっかり穴が空き、家族の関係は少しアンバランスに。折しもコロナ禍、医療従事者の一家は慌ただしく、毎食自炊で片づけまで手がまわらず、部屋は散らかりました。
たくさんの遺品も片づかない一つの理由。母は熱心な医師であり器用な「趣味の人」。アンティークなどのコレクターであり自身も作家でした。
「食器に人形、書籍までジャンルを問わず収集する人でした。基準は『かわいい』という一点で、骨董(こっとう)品から何これ?って物まで一緒にあります。母は元気な時に処分しようとしたんですが、死を認めるみたいなので家族が止めました。あのとき一緒に片づければよかったですね」