北京冬季五輪のフィギュアスケート団体戦で初のメダルを獲得した日本勢。快挙の裏に選手同士の気配りと励ましがあった。AERA 2022年2月21日号は「フィギュア」特集。
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全員がほぼノーミスでバトンを繋いだ。フィギュアスケート団体戦。日本は3大会目にして念願のメダル(銅)を手にした。
ソチ、平昌では5位だった日本。2大会連続で「メダルを持ち帰れない五輪」の悔しさを味わった木原龍一(29)と、平昌にも出場した坂本花織(21)がムードメーカーとなった。
選手村はマンションのようなつくりで、共用のリビングと各自の寝室がある。木原は試合前日の2月3日、男子の出場者たちとリビングでこんな話をした。
「団体戦だからといって責任感から緊張せずに、個人戦のウォーミングアップと思って。あと男子シングルは個人戦が続くけど、普段の練習でプログラムの曲を何度も掛けてるほうがキツいんだから、大丈夫!」
■喋ってほぐし合う
初出場となる五輪の雰囲気にのまれていた樋口新葉(21)を、坂本が絶妙に支えた。
「私と新葉は喋って発散するタイプ。全日本選手権でも、6分間練習のあと気が散らない程度に喋(しゃべ)って、ほぐし合っていたんです。選手村では部屋に緊張を持ち込まないようにしたいです」
坂本は選手村にプロジェクターとスピーカーを持ち込み、樋口が好きなドラマを一緒に見て、練習の合間はリラックスできるようにした。初練習でも気配りを怠らなかった。
「ジャンプが力んで、いつもどおりに上がらない」と焦る樋口に、坂本が「1回目やからな、しゃあない」と笑顔で返す。真面目な樋口は「仕方ないで終わらせたくないから頑張る!」と笑った。
そして迎えた2月4日。団体戦のトップバッターは男子ショートだ。宇野昌磨は4回転フリップだけでなく、苦戦していた4回転トーループ+3回転トーループを成功すると、105.46点で2位に。順位点9点をもたらした。「練習と同じ気持ちで跳ぶことができました」