冒頭の女性教員が指摘した「公平・公正な採点」への懸念は、19年度のプレテスト時からあった。懸念がとりわけ大きい理由を、都庁で中止を求める会見を開いた新英語教育研究会会長の池田真澄さんはこう話す。
「スピーキングテストが、導入撤回になった大学入学共通テストの英語民間試験や記述式と同根だからです」
都はスピーキングテストの実施にあたり事業者を公募し、ベネッセコーポレーションと共同運営している。採点を担うのはベネッセの協力会社・学力評価研究機構で、見送られた共通テストの記述式の採点も請け負っていた。
共通テストの記述式でも「50万人の採点を短期間で公平・公正に行うことは不可能」との声が教員や専門家から上がっていた。国会での質疑や有識者会議の検討などを経て「課題の克服は容易ではなく、実現は困難」と結論づけられた経緯がある。
■採点ミスがわからない
東京都教育委員会はこうした懸念の声をどう受け止めているのか。国際教育推進担当課長の西貝裕武さんは言う。
「スピーキングテストは、都が事業主体。民間事業者が主体だった共通テストとは違います。事業者に丸投げすることなく、全工程を共有して進めています」
テストはタブレットを使用し、生徒が録音した音声データをもとにフィリピンで採点する。採点者は、英語の指導資格と高い採点技術の保持者とされ、専用の研修を実施し、修了試験に合格しないと関われないという。
「1人の解答を2人の採点者で担当し、評価に齟齬(そご)があった場合には3人目のリーダーがチェックします。採点者の人数は事業者のノウハウに関わる部分なので公表できませんが、必要な人数は把握し既に確保しています。また、公平・公正な採点ができているかはプレテスト時に解答と評価を対照し都教委で独自にチェックもしました。コロナ禍で、採点の現場に足を運ぶことはできませんでしたが、オンラインで確認もしています」(西貝さん)