■1教科に匹敵する配点

 さらに、新たな問題も取りざたされている。スピーキングテストの成績は20点を満点として、調査書点に加算されることになった。ところが、調査書の内申点では英語や数学などの主要教科の満点が約23点。英語の1技能にすぎないスピーキングの配点がほぼ1教科分に匹敵することにも疑問の声があがっている。

 前出の新英研の池田さんは言う。

「個人情報の扱い、事業者への利益誘導、対策塾に通える生徒と経済的に困難な生徒との間で生まれかねない学力格差など、懸念点はほかにもあります。東京でこのスピーキングテストが行われれば、全国に広がる可能性もある。広く問題点を共有し、多くの人に考えてほしいです」

 都教委は、3月以降、教員などを対象に音声データなども使った説明会を実施し、懸念解消に努めたいという。

 だが、取材では「スピーキングテストを知っているのは英語教員だけ」「わかっているのは英語教員の中3担当だけ」といった声も聞かれた。生徒の進路を左右しかねない大事な案件にもかかわらず、学校現場への周知も十分行き渡っていないようだ。また、コロナ禍でスピーキング指導は、発話の制限など制約が多く「こんな時期に性急に導入する必要があるのか」といった声もあった。

 スピーキング力の育成の重要性はだれもが認めている。しかし、入試へのテスト導入が本当に適正で効果的なのか。都は7月下旬から申し込み開始を予定しているというが、教員や生徒、保護者など関係者への周知と理解、納得を得ることなく見切り発車することだけは避けなければならない。(編集部・石田かおる)

AERA 2022年2月21日号