
「営業に出るために資格を取らなければならないのですが、その勉強が想像以上に大変そうだったのです。そのせいで受験勉強ができないのは困りました。とはいえ収入がないのも困るので、辞めて10日後に配置薬の営業の会社に再就職しました」
濱井さんの計画はこうだ。3年間、働きながら塾に通い、300万円を貯金する。新卒4年目は会社を辞めて受験に専念し、大学に合格する。そうすれば26歳で大学に入学し、20代のうちに新しい大学4年間を過ごすことができる。
「朝6時に起きて、数学の参考書を読み、朝7時半から夜7時半ぐらいまで働いて、8時15分から予備校の授業を受けていました。会社は親族経営で、給料の未払いが多発していました。若手にはなるべく給料を出していたようなのですが、周りには月に4万、5万円しか払われなかった人もいるような会社でした」
仕事では、営業所内の成績1位を取った。周りの社員と違い、顧客一人ひとりとコミュニケーションの時間を多く取り、信頼関係を築くことを重視した結果だった。続いて全社1位の成績も取った。しかしそれによってコンプレックスが消えることはなかった。
「仕事の成績は社内の人でなければその努力のすごさが分かりません。でも出身大学は、誰でもすごさが分かる。その名前のブランド力は大きいと思います」
■「受験に向いてない」言われてもあきらめなかった
受験費用の節約のため、会社を辞めて受験に専念するまでは大学に出願しないことにした。新卒2年目、濱井さんにとっての「6浪目」には初めてセンター試験を受けたが、5教科7科目の得点率は39%。予備校のチューターから「詰められた」ときの言葉が今でも忘れられないという。
「これじゃお前がいた龍谷大にも入れないぞ」
「お前は受験に向いてないよ」
それでも濱井さんはあきらめなかった。
「高校で自分をいじめてきた同級生を見返したいという反骨心が大きな理由です。それに日本史は中学生のころから成績もよかったですし、自分は暗記ならできなくはないと思っていました。小さな成功体験を思い出すことで、自分はできると言い聞かせていました」
予定よりも早く300万円がたまり、新卒3年目の10月に会社を辞めた。その年のセンター試験は前年より10ポイント上がり、49%。努力は少しずつ点数に表れていた。