
動物写真家・岩合光昭さんが見つけた“いい猫(こ)”を紹介する「今週の猫」。今回は、モロッコ・マラケシュの「みんにゃ生きている」です。
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マラケシュの中心地、ジャマ・エル・フナ広場は「死者たちの広場」という意味。かつての処刑場は、今や無数の屋台がひしめく巨大な迷路と化している。
早朝、動き始めた広場の奥からメス猫が歩いてきた。ジュース屋の前で腰を下ろすと、屋台の主人が出てきてミルクを置いた。隣の屋台の下から、わらわらと子猫が出てくる。彼女の子たち。母猫と一緒に、こぼしながらも懸命にミルクを飲む。
次の食事を得るため、母猫は再び雑踏に消えた。ひたむきに生きる彼女に、胸が熱くなる。
※週刊朝日 2022年2月25日号