きしだ・なみ/作家。1991年、兵庫県神戸市生まれ。ベンチャー企業の創業メンバーとして約10年間勤めた後、作家として独立。著書に『もうあかんわ日記』など
きしだ・なみ/作家。1991年、兵庫県神戸市生まれ。ベンチャー企業の創業メンバーとして約10年間勤めた後、作家として独立。著書に『もうあかんわ日記』など
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 コロナ禍をきっかけに、これまで順調だった家族関係にヒビが入った人もいるだろう。ぎくしゃくした関係を修復するにはどうすればいいのか。AERA 2022年2月28日号は、母親との関係に悩んだ作家・岸田奈美さんに聞いた。

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 うちは車椅子の母、ダウン症の弟、認知症の祖母、そして私の4人家族です。

 ふだん、家族が住む兵庫の実家と、京都にある私の仕事場兼自宅を往復していて、実家には週3日、祖母の介護でヘルパーさんに来てもらっていました。それが、コロナの感染への不安からサービスを受けられなくなってしまいました。家のなかはパニックになり、コロナ禍とはわかっていますが私はサービスが止まったことを問いただそうとしたんです。でも「噂が回るから」と、母が嫌がりました。

 私は、人の目を気にしすぎて、割を食っている母を見るのがつらかったんです。これまでも、母自身が我慢したせいで、何度か倒れる姿を見てきました。母とはほとんど喧嘩したことがなかったけれど、この件ではさすがに強く言ってしまうこともありました。だけど、「他人に迷惑をかけるな」と言われて育った母には受け入れてもらえませんでした。

 私たち親子は何でも言い合ってきたと思います。だけど、そんな私たちですら、こんな時世も相まって本音を言いにくくなっていました。

 これまでも「人目を気にしすぎ」と言っていましたが、本気で否定はしなかった。でも、現状を変えるには、嫌われるかもしれない思いで踏み切るしかない。家族の問題は何十年もの蓄積で、問題を後回しにしてもつらい。自分が死ぬ直前まで、その選択が良かったかどうかはわからないと思います。でも、めちゃくちゃ嫌いなのに、めちゃくちゃ愛しているのが家族なんだって思います。

(構成/編集部・福井しほ)

※AERA 2022年2月28日号