帯津良一(おびつ・りょういち)/帯津三敬病院名誉院長
帯津良一(おびつ・りょういち)/帯津三敬病院名誉院長
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 西洋医学だけでなく、さまざまな療法でがんに立ち向かい、人間をまるごととらえるホリスティック医学を提唱する帯津良一(おびつ・りょういち)氏。老化に身を任せながら、よりよく老いる「ナイス・エイジング」を説く。今回のテーマは「老いても学ぶ」。

*  *  *

【一生】ポイント
(1)「学びとは一生のもの」と佐藤一斎らは語っている
(2)私をまねる後輩に出会って、さらに学ぶ気になった
(3)このまま90歳になっても学び続けるつもりでいる

 以前にも少し触れたことがあるのですが、西郷隆盛が愛読したという佐藤一斎の「言志四録」のひとつ、「言志晩録」に「学は一生の大事」という項目があります。以下のような内容です。

「少にして学べば、則ち壮にして為すこと有り。壮にして学べば、則ち老いて衰えず。老いて学べば、則ち死して朽ちず」(川上正光全訳注/講談社学術文庫)

 つまり、学ぶことを一生続ければ、その時々にいい結果をもたらすということなのですが、特に老いてからの学びは死を乗り越えるというのですから、すごいですね。

 20世紀最大の物理学者、アルベルト・アインシュタインが残した名言にも次のようなものがあるそうです。

「学べば学ぶほど、私は何も知らないことがわかる。自分が無知であると知れば知るほど、私はより一層学びたくなる」(『学び続ける理由』戸田智弘著/ディスカヴァー・トゥエンティワン刊による)

 つまり、学ぶと無知であることがわかり、さらに学びたくなるのですから、学びには終わりがないということなのです。

 要するに一斎もアインシュタインも、学びとは一生のものだと語っているのです。私もその通りだと思っています。

 その気持ちが強くなったのは、ある女医さんと出会ってからです。もう20年以上も前のことですが、九州の大学病院から、外科が専門の女医さんが、「ホリスティック医学の修業をさせてください」といって訪ねてきました。全身に気概が満ちています。そういう人であれば、こちらも諸手をあげて歓迎です。

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