65歳になると制度がガラリと変わる。加入者は「高年齢被保険者」と呼ばれるようになり、失業した場合の失業保険も、基本手当から「高年齢求職者給付金」になる。

 失業保険なので「失業の状態」にあることが必要で、「年をとったので辞めて引退」する場合は給付金はもらえない。あくまで仕事をする意思と能力がある場合で、離職前1年間に被保険者期間が6カ月以上あればOKだ。

 給付金もシンプルで、基本手当と同じく月給を日給換算した50~80%程度を、被保険者期間が1年未満なら「30日分」、1年以上なら「50日分」が一時金でもらえる。仮に1日5千円がもらえるとすると、その50日分だと「25万円」になる。

 基本手当のように年金との選択ではなく、年金を受給しながら受け取れる。また、以前は65歳以降に退職した場合に1回きりもらえる制度だったが、65歳以降も雇用保険に加入できるようになったため、今は条件さえ満たせば何回でももらえる。

 先の澤木氏は、65歳以降は週3日程度の「チョイ働き」をしながら、老後資金を長持ちさせるライフスタイルを推奨しているが、そんな生き方にもこの給付金は生かせそうだという。

「チョイ働きにもいろいろな職種があります。さまざまな仕事を経験したいと考えている場合に、一定期間チョイ働きをして次の職種に移るまでの間などに使えますね」

 このように、長く働けば雇用保険のいろいろな制度を利用できる。昨年度からは一般社員と同様に65歳以降の加入者も保険料を納めている。堂々と制度を利用すればよいのである。(本誌・首藤由之)

週刊朝日  2022年3月4日号

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首藤由之

首藤由之

ニュース週刊誌「AERA」編集委員。特定社会保険労務士、ファイナンシャル・プランナー(CFP🄬)。 リタイアメント・プランニングを中心に、年金など主に人生後半期のマネー関連の記事を執筆している。 著書に『「ねんきん定期便」活用法』『「貯まる人」「殖える人」が当たり前のようにやっている16のマネー 習慣』。

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