失業した場合などに給付を提供する雇用保険。コロナ禍では休業手当を支援する「雇用調整助成金」が注目されたが、60歳を超えて働くのなら知っておいたほうがいい制度がたくさんある。長く働く時代の「雇用保険ガイド」をお届けしよう。
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週20時間以上働く仕事なら、たいていの場合、雇用保険の被保険者になる。以前は「新たに雇用される場合は65歳まで」と加入年齢に上限が定められていたが、2017年に撤廃された。このため週3~4日働く「チョイ働き」を含めて、今や雇用保険は働く場合に一生お世話になる社会保険になっている。
60歳より上で、もっとも知られている雇用保険の制度といえば、「高年齢雇用継続基本給付金」だろう。60歳定年後に再雇用される場合に必ずと言っていいほど使われる制度で、最大、60歳以降の月給の15%がもらえる。支給額を決めるのは60歳到達時、つまり定年前の月給からの下がり具合。月給が75%未満になれば給付金の支給が始まり、61%以下で最大になる。支給期間は60歳から65歳までの最長5年間だ。
15%もらえる場合、再雇用での月給が20万円なら給付金は「月3万円」、30万円なら「同4万5千円」にもなる。2カ月ごとに振り込まれるというから、大きい金額だ。
興味深いのは、初回申請時に振込先を改めて指定できること。つまり、月給と同じ金融機関を選ばなくてもよい。高齢者の労働事情に詳しい社会保険労務士の澤木明氏が言う。
「この給付金、実は奥さんに内緒の『へそくり』に使えるんです。制度が違うので月給の明細には出てきませんし、給付金の通知も社員ごとに配る会社もあるが、配らない会社もあります。誰にも知られずに、おこづかいをためられるわけです」
実際、「へそくり」用に使っている会社員は多いようで、会社や顧問社労士が行うハローワークの手続きが遅れて、いつもより支給が遅くなると、「社員側から、やいのやいのと催促が出てくる」(澤木氏)とのことだ。