そして、一番よかったのは、たぶん太極拳です。それまで、週に1回ぐらい患者さんたちとやっていたのですが、病院の道場で早朝に一人で舞ってみたら、それが楽しくなってしまい、毎日の日課になったのです。
なんとこの三つの変化が私の下半身に影響を与えました。走力が確実に回復してきたのです。
最近、『崑ちゃん90歳今が一番、健康です!』(大村崑著、青春出版社)という本を見つけました。大村崑さんって、懐かしいですね。どうされているのかと思ったら、本の帯に90歳とは思えない、若々しい写真が掲載されていました。
大村さんは、なんと86歳から筋トレを始めたというのです。ジムに通い、トレーナーの指導を受けたというのですから、本格的です。そして筋トレにはまってしまいました。結果、体重は60.4キロから57.5キロに、体脂肪率は25.9%から17.1%に、筋肉量は42.4キロから45.2キロになったというのですから、すごいですね。
筋力、体力を強化するのに、年齢は関係ないのです。それは私の経験とも一致します。
70代のときにそれに気づいていたら、というのが私の後悔です。歳だからと、あきらめてはいけなかったのです。
帯津良一(おびつ・りょういち)/1936年生まれ。東京大学医学部卒。帯津三敬病院名誉院長。人間をまるごととらえるホリスティック医学を提唱。「貝原益軒 養生訓 最後まで生きる極意」(朝日新聞出版)など著書多数。本誌連載をまとめた「ボケないヒント」(祥伝社黄金文庫)が発売中
※週刊朝日 2022年3月11日号