むろん、ノンエリート体育会系が大企業で活躍するケースがないわけではありません。ただし、言い方がむずかしいのですが、「マネジメント」ではなく「ソルジャー」としての立ちまわりを期待されることが多いようです。実際、体育会系を求めるといってはばからない大企業であっても、マネジメントと現場を分けて採用しているという話を聞くこともありました。
―――大学は体育会系学生に対するキャリアサポートを十分に行っていないのでしょうか。
体育会系の学生でも、学力面で適正に選抜されて入学していれば、大学からのサポートはそこまで必要ないものと考えます。そうではなく、本当に勉強していない学生が入ってくる大学では、勉強している学生とのコントラストが際立ってしまい、キャリアサポートの不十分さが露呈してしまうのかもしれません。
勉強をしてこなかった学生を入学させるなら、進路、学習面での支援は必ず必要になります。が、特に中小の大学はこれについてノウハウを持っていないところが多い。それでも大学は経営のため、体育会系学生を集めようとする。これらのことは、問題が社会的かつ構造的であることを示しています。
例えばアメリカの大学ではアスリート・サポートの部署を充実させており、そこでは教員ではなく職員であっても教育学や心理学の修士以上の学位を持つ者が多く働いています。大学は、体育会系学生を増やすのであれば、そうしたサポートシステムにかかるコストも負担することを考慮に入れてほしいと思います。
―――体育会系の学生にはどんな課題がありますか。
特にノンエリート体育会系は、自分の人生を自分で決めるという考え方を獲得してほしいと思います。スポーツ指導者や保護者の都合で進路や就職先を決めていくと、いざという時に人任せになり、力を発揮するステージに立てずに終わったり、それを人のせいにするようになったりしてしまいます。そうならないように、まずは自分と自分が置かれた環境を客観的に把握してほしいと思います。プロになりたい、教員になりたい、トレーナーになりたい、大企業に勤めたいなど、可能性は無限に開かれているとは思いますが、何事も狭き門に自分以外の競合相手がひしめいていることを肝に銘じるべきかと思います。そうして、自他と環境を冷静に分析する中で、主体性を養ってほしいと思います。そして大学は、学生がこうした主体性を獲得するのをサポートすべきだと思います。