※写真はイメージ (c)GettyImages
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 大学3年生の就職活動がこれから本格化します。新卒採用では「体育会系学生は就職に有利」と長年いわれてきました。そこにはどのような背景、歴史があるのでしょうか。いまでも有利なのでしょうか。京都先端科学大学准教授の束原文郎さんは著書『就職と体育会系神話』(青弓社)で、体育会系学生の就職活動のあり方を探り、問題提起しています。束原さんに話を聞きました。

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―――体育会系学生は就職に有利、そんな神話が語られることがあります。これはどのような背景があるのでしょうか。

 コミュニケーション力がある、交渉力にたけている、そして顔が広くて営業に向いている、といったことが今でも通説として語られるきらいがあります。

 歴史的にみると、体育会系の学生は健康状態がきわめて良いことを企業が高く評価していたのが、神話を成り立たせた大きな理由でしょう。

 大正時代、結核で多数の死者を出すなど衛生状態が今ほど整っていなかったころの話です。相次ぐ恐慌によって慢性的な就職難に陥っていた国内だけでなく、旧満州(中国東北部)・北海道などの寒冷地や台湾以南の暑熱地など、いわゆる外地で仕事に従事してもらう場合、体育会系の学生は健康状態が良く体力があったので、各企業からひっぱりだこだった、ということがありました。採用に際して、健康を重視する考えは、この時代から企業の利益と効率性に基づいたものとして認識されたようです。

―――体育会系神話はいつごろから語られるようになったのでしょうか。

 90年近く前、昭和初期の帝国大学新聞(帝国大学=東京大の前身)に次のような記事があります。

「スポーツマンに取つては目前の就職地獄は物の数ではない。スポーツマンの就職には苦労がなく直ぐさま話が運び入社試験もほとんど形式的であるらしい。スポーツマンの中には学問がよく出来る人もあるが、大体において成績がよくない。学校の成績がよくないスポーツマンが何故か高く評価されるのであらうか」(1933年3月13日号)

 ここに体育会系神話の原型の一つがあると見ることができます。

―――大学で「成績がよくな」くても就職に有利、という現状が示されています。どのような理由からでしょうか。

 当時、京都帝国大(現・京都大)の学生で、のちに読売新聞運動部長になる宇野庄治氏は次のように記しています。

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