―――さきほど、体育会系神話では女性が評価されなかった、という話が出ました。

 いま、日本ではさまざまな分野で女性が活躍しないとどうにもなりません。昔ながらの性別役割分業にこだわった採用方法を続ければ、世界からどんどん取り残されてしまう。これから企業は体育会系か否かにかかわらず、女性を積極的に活用しなければならないでしょう。男性だから女性だから、という捉え方がなくなり、たとえば、出産、育児に対応できるよう、女性に対する文化的な障壁を下げて、企業は子育てへのサポートを充実させる。そうなれば体育会系の女子が活躍できる世界が広がります。女子の就職枠を増やしていくことで、ジェンダー格差が少しでもなくなることを望みます。

 そして、データ上も良い兆しが見えています。私は、株式会社アスリートプランニングのサービスを利用した体育会系学生の就職動向を継続的に分析していますが、直近、2021年3月卒のデータでは、人気企業への内定獲得率がデータを取り始めて以来初めて男女で逆転しました。つまり、女性アスリートのほうが評価され始めていると思われます。もともと、女性アスリートのほうが学業成績(GPA)は高い傾向にあり、企業はようやく現実を理解し、人物や資質を適正に評価し始めたのかもしれません。

―――就職において体育会系神話が良い方向に進むにはどうしたらいいでしょうか。

 大学スポーツは学生のためにあるべきだと、私は考えています。

 企業は「○○大学の○○部に所属していた学生がほしい」などと、所属していただけで評価するというのではなく、学生一人ひとりを見分ける目をしっかりもってほしい。大学スポーツでの経験を、社会で生かしたいという熱い思いを持った学生を評価し、採用してほしいと思います。

 学生側も「がまんして4年間やり過ごせば良い就職先が待っている」みたいな考え方は断固捨てるべきです。自身がスポーツを通じて身につけたこと、学んだこと、自分を成長させたポイントを企業にアピールして、評価してもらうようにしましょう! ポジティブで前向きに考える体育会系学生の姿勢は、社会にとって大きなプラスになると信じています。

(構成/教育ジャーナリスト・小林哲夫

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