星友啓著『全米トップ校が教える自己肯定感の育て方』(朝日新書)※Amazonで詳細を見る
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 忘れたいような嫌なことが起きたときに、忘れようと試みるものの、どうしても気になってしまう。それどころか、その気持ちを抑え込もうとすればするほど、ネガティブな気持ちが強くなる。誰しもそんな経験があるものです。

 さらに、ネガティブな気持ちを無理やり忘れようとすると、心だけでなく体にも様々な悪影響が出てきてしまいます。

 例えば、ハーバード大学などの研究で、自分の気持ちを抑え込みがちな人は疾患による死亡リスクが30%高まってしまい、癌になる確率も70%上がるなんていう驚きの報告もされているくらいです。

 だから、私たちは、自分のネガティブな気持ちとのうまい付き合い方を見つけないといけません。

 そもそも、私たちの心にあるネガティブを取り除こうとする発想が非現実的なのです。というのも、ネガティブに感じたり、考えるのは人間にとって必要な能力だからです。

 例えば、このようなことです。

●肝心な問題を間違えて、模擬試験で落第点。ガッカリ。同じ間違いを繰り返さないように気をつけて、本番のテストでは大成功。
●いい人そうなので、本当は信じたいのだけれど、疑ってかかる。悪い予感は的中、ブラックセールスにひっかからないで済んだ。

 このように、私たちはネガティブな感情や思考のおかげで、失敗を繰り返さなくて済んだり、より正しい決断ができたりするわけです。

 だからこそ、ネガティブな心の働きは、人間の進化の歴史の中で、私たちの脳の仕組みとして継承されてきたのです。

 実際、近年の心理学や脳科学の研究で、ネガティブな事柄に対する脳の反応の方が、ポジティブな事柄への反応よりも、断然強いことが明らかにされてきました。

 例えば、とっても幸せなディナーのひと時も、最後の不快な店員のひとことだけで、台無しなんてことも。どんなに幸せなディナーの時間が長かったとしても、最後の店員の一瞬の態度ですべてが打ち消されてしまうのです。

 そのように、ポジティブより、ネガティブな事柄に強い気持ちを感じてしまうのは、私たちの脳のもつ基本的なメカニズムによるものです。これを「ネガティビティー・バイアス」(negativity bias)と呼びます。

 だからこそ自己肯定感を持続するのが難しい。私たちの心にはネガティブに反応するようにできている。しかも、それがポジティブな心の機能よりも強く働いてしまう。

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至ってシンプルだという、求めるべき自己肯定感とは?