■子ども同士が性暴力をふるっても記事にならない

 さらに、塩崎さんはショッキングな話を続ける。

「あまり知られていませんが、施設内の子ども同士の性暴力は深刻な場合がある、と聞きます。ふつうの家庭では親の目もあり、常軌を逸する行動はほぼありませんが、人手不足の施設の下では起こり得る。職員が子どもに性暴力をふるったらすぐ記事になるけれど、子ども同士の場合、気づかれないため、何の記事にもなりませんでした。それが三重県で初めて記事になったときは、みな驚きました」

 これは、離婚後に体調を崩した女性が娘(当時7歳)を三重県の施設に預けたところ、同じ施設の少年から下着を下ろされて下半身を押しつけられるなど、わいせつ行為を繰り返し受けたとして、13年に県と施設、少年を提訴した事件だ。17年、津地裁は性被害を認め、少年の母親に180万円の支払いを命じた。

 この報道を受けて、厚労省は委託調査を行った。報告書によると、17年度に自治体(全都道府県、政令市、児童相談所設置市)が把握した児童養護施設などにおける「子ども間で生じる性的な問題」は250件、それに関わった実人数は649人。ただし、この数は調査対象の施設が「認知・把握した数」であり、「発生数」ではない。実際の発生数はさらに多いと見るべきだろう。

「問題が起きがちなのは、『大舎』と呼ばれる20人以上の子どもが収容される施設です。ケアが手薄となり、職員が気づかないためでしょう。大きな建物の中を6人単位に分けた『ユニット型小規模施設』にしているところが多くみられますが、廊下で全部つながっているから、性暴力は個室で発生してしまうようです。あるべき子どもの健全な心や頭脳の発達のためには、やはり、里親や特別養子縁組のような、家庭と同様な養育環境が大事なのです」

 親の虐待から逃れてきた子どもたちが、今度は性暴力の危険にさらされる。なぜ、長年このような状況が全国各地で放置されてきたのか?

「実は、厚労大臣になったとき、日本の児童福祉法は戦争孤児対策の延長で今日まできてしまったという話を聞かされて、大ショックを受けました。戦後は孤児を施設収容すれば事足りましたが、いまは虐待により、心に深い傷を負った子どもの心と向き合い、いかに健全な育ちを再び確保するのか、という難しい問題解決が不可欠なのです」

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児童福祉法改正で厚労省の局長らと大激論