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以前、宿題は必要か不要かで、大きな論争が起きたことがありました。デューク大学のハリス・クーパー教授の論文にある、「小学生から中学生の時期は、勉強面で宿題はあまり意味がなく、効果をもってくるのは中学生や高校生になってからだった」という内容がYouTubeで紹介されたのがきっかけでした。
クーパー教授の論文は、最終的には「宿題をやるべきかやらざるべきか、どちらがよいのかは不明」とまとめつつも、「小学生に多量の宿題を出しすぎるのは悪影響になる」ということを書いていたようですが、そこから、「宿題を出すのはやめたほうがいい」という意見が出され、議論になったのです。
私としては、成績アップのために宿題は必要かどうかを問われるならば、「そこまで意味がない」という意見に賛成していました。もし点数を上げたいなら、みんな一律に同じ内容の宿題に時間を使うより、各自が苦手な教科に特化して勉強したほうがずっと効率的でしょう。
ただ、勉強面に限らないで、「子どもを伸ばすためのアイテム」としてみるならば、宿題はあったほうが便利だと思うようになりました。ハリス・クーパー教授の論文の焦点は、「賢くなるかどうか」というものでした。そこではなく、「家で嫌なことを我慢する」だとか、「家で勉強するための場所や習慣をつくる」といったツールになりえるという点が、宿題のポイントなのだと思います。
子どもにとって、毎日「自分の意思で」「我慢して何かをする」という機会は、存外少ないです。大人になってからは、 仕事が終わったらジムへ行く、 家に帰ったら実用書を読むなど、自らルーティンを作れる人は多いでしょう。一方、子どもは大人よりも、自分のやりたいことに忠実です。友人と遊んだり、ゲームをしたり、自分の欲求のために時間を使ったほうが、楽しいに決まっています。小学低学年のうちから、将来の進学先を考え、机に向かって勉強する時間を設けようと思う子なんて、ほとんどいません。