しかし、未来のことを考えて我慢をする、という能力を伸ばすことは、今後の成長のために重要です。スタンフォード大学の心理学者・ミシェル・ワルタ博士が行った、こんな実験があります。
彼は、子どもの前にマシュマロをおき、「15分間食べないように」と伝え、さらに「食べなければもう一つマシュマロをあげる」と伝えました。そして何人もの子どもをテストして、実際に我慢できた割合は50%といったところでした。
ただ、注視すべきは、この実験を受けた子たちの、その後の追跡調査です。大学受験の際に必要なテストの結果を調べたところ、食べるのを我慢できた子どもたちのほうが、食べなかった子どもたちよりも、有意に点数が高いという結果が出たのです。さらに、マシュマロを食べなかった子どもの3人に1人は社会的評価が高い職業につき、脳を調べてみると、計画性・社会性に関係する部位が発達していることがわかりました。
■宿題は自制心を伸ばすツールのひとつ
つまり、小さいうちから「先のことを考えて我慢をする」という自制心を身につけ、伸ばしていくことは、将来的な成功につながるのです。そうした考え方を鍛えていくためのものとして、宿題は便利なツールとなるわけです。
また、学校だけではなく、「家でも」勉強するという点で、宿題は効果を発揮します。中学生以上になると自我が強くなってくるため、その時期から、「家で勉強しなさい」と言っても、始めるのは大変になってきます。ともすると、高校受験や大学受験で苦労するのではないでしょうか。
しかし、小学生のうちからやっていれば、ハードルは低くなります。勉強がそこまで難しくない時期なら、親が宿題をみることもできるので、小学生のうちは比較的素直に宿題をやってくれやすいのではないかと思います。
■宿題は単なる手段で目的ではない
ただ、ハリス・クーパー教授が言及したように、宿題をやることで悪影響になることもあります。以前、「宿題をやらせようとするとけんかになって親子の関係が悪くなる」という相談を受けたことがあります。親子の仲と宿題を比較するならば、私は親子仲を優先したほうがいいと思います。宿題をやることで身につく能力が大事なわけで、つまりは単なる手段であり、目的ではないのです。
自制心を伸ばすための代替品は、探せばいくらでもあるでしょう。メリットよりデメリットのほうが大きい場合は、あえて宿題というツールを無理に使わなくてもいいと思うのです。