
核兵器の使用や威嚇を禁止する核兵器禁止条約の第1回締約国会議が近くウィーンで開かれる予定だ。核不拡散条約(NPT)下の米ロ英仏中の5核保有国や米国の「核の傘」に安全保障を委ねるとされるNATO諸国と同様、日本政府も核禁条約に背を向けてきたが、岸田首相は「核兵器のない世界に向けての出口にあたる重要な条約」だと評価している。NATOの一角でありながら条約締約国会議へのオブザーバー参加を決めたドイツやノルウェーとともに、日本の動向が注目されている。

ロシアであれ米国であれ北朝鮮であれ、「核のボタン」を握るリーダーの一存で、世界が存亡の危機にさらされるリスクがあらわになった。被爆国日本のリーダーと市民社会が「核なき安全保障」実現に向けた意志と構想力を世界に示す時だろう。(朝日新聞記者・田井中雅人)
※AERA 2022年3月28日号より抜粋