すべての物の場所が決まり家族がそれぞれ片づけをしだすと、彼女のイライラは消えました。子どもが騒いでも冷静でいられるし、ちゃめっ気たっぷりに怒った顔をしてみせる余裕も生まれました。子どもも素直に謝ったり切り替えたりできるようになり、幼稚園であったことも以前よりたくさん話してくれるようになりました。
何より彼女にとって45日間は、これまで苦手だった決断と行動を体に染み込ませる時間になったと言います。
「夫への依存が減りました。なんでも夫まかせ、どこに行くのも夫まかせでしたが、プロジェクト中は、夫が忙しくてワンオペが続いても『早く帰ってきて』と言ったり文句や愚痴を口にすることがなくなりました」
夫婦のパワーバランスがどちらかに偏っているとき、劣る方は言葉を飲みこんだり、判断を相手に委ねすぎたりしてしまうことがあります。彼女は本音のところでそこに気づいていたから、物を処分し、収納を決めて行く中で、自立するほうへ持っていけたのだと思います。
そして夫は、心から仕事に専念できる環境をつくってくれた彼女の気持ちをちゃんと受け止めてくれていたんですね。こんなふうに話していたそうです。
「この忙しい中、いろいろ言われていたらイライラしただろうし、たぶんイヤになってたな。自分でいろいろ決めてくれるようになったしね」
彼女は、「家族をサポートできる自分」に少し近づけたと感じているそうです。
家族がつらい状態にあるとき、羽を休め、パワーを最大限に出せるように部屋を整え寄り添った彼女の話を聞いて、片づけは「最強のディフェンス」だと感じました。激動の世の中、部屋を整え、心を穏やかにすることが家庭の「おまもり」になるのだと思います。
※AERAオンライン限定記事