週刊朝日ムック『手術数でわかるいい病院2022』では、全国の病院に対して独自に調査をおこない、病院から得た回答結果をもとに、手術数の多い病院をランキングにして掲載している。また、実際の患者を想定し、その患者がたどる治療選択について、専門の医師に取材してどのような基準で判断をしていくのか解説記事を掲載している。ここでは、「難聴・耳鳴り」の解説を紹介する。

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 難聴にはさまざまな原因があり、加齢による「加齢性難聴」のほか、突発性難聴や中耳炎、耳硬化症、聴神経腫瘍など、病気によって起こる難聴もある。病気が原因で起こる難聴では、適切な治療により難聴が改善することもあるが、加齢性難聴は治療によって治すことはできない。しかし、難聴を放置すると、聞こえにくいことによる生活上の不便やコミュニケーションの減少だけでなく、認知症やうつ、フレイル低下などにつながる可能性も示唆されている。

 認知症については、2017年の国際アルツハイマー病会議で、ランセット国際委員会より「認知症の予防可能なリスク因子のうち、最大のリスク因子が難聴である」と報告された。つまり、難聴を放置しないことは、認知症のリスクを減らすことにつながる可能性があるのだ。

■諸外国と比べ圧倒的に低い補聴器装用率

 難聴を治すことはできないが、補聴器を装用することで聞こえを補うことはできる。聞こえにくさを感じたら、早めに耳鼻科を受診し、必要と判断されたら補聴器を装用することが望ましい。しかし、日本では補聴器をつかう人が少なく、補聴器の装用率は諸外国と比較して圧倒的に低い。「たかが難聴、今は大丈夫」と見過ごすことなく、早期に対応することが大切だ。

 また、難聴と深い関わりがある耳のトラブルに耳鳴りがあるが、その多くは難聴が原因で起こるといわれる。本来、耳から入る音は電気信号に変換されて脳に伝わるが、難聴になると脳に伝わる信号が減るため、脳が信号をキャッチしようと過剰に働くことで耳鳴りが起こると考えられている。耳鳴りに悩む人は多いが、専門的な治療を受けられる医療機関はまだ少ない現状がある。

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補聴器は眼鏡と違い「慣れ」が必要