これにくらべて、今はどうでしょうか。便利さは格段に違います。携帯電話でいつでも連絡を取ることができます。海外の知り合いとも、顔を見ながら話すことができます。私はやっていませんが、SNSなどを駆使すれば、多くの人たちとつながることができます。でも私には、向こう三軒両隣の絆の方がよかったように思えるのです。

 今はネットで注文すれば、すぐに物が届きます。でもメンチカツを買うために、肉屋さんの行列に並んだときの、ときめきは感じることができません。

 歳をとると、昔のことがよく思えると言われてしまえば、それまでです。しかし、人間は私が生きてきた間に進歩したのだろうかと考えると、そうでもないように思うのです。いまだに、コロナや大地震に脅え、ウクライナでは戦争をしているのですから。

 ただ素晴らしくなったことが一つだけあります。それは人生100年の時代になったことです。せいぜいその利点を、ナイス・エイジングで活かすことにしましょう。

帯津良一(おびつ・りょういち)/1936年生まれ。東京大学医学部卒。帯津三敬病院名誉院長。人間をまるごととらえるホリスティック医学を提唱。「貝原益軒 養生訓 最後まで生きる極意」(朝日新聞出版)など著書多数。本誌連載をまとめた「ボケないヒント」(祥伝社黄金文庫)が発売中

週刊朝日  2022年4月8日号

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