◆有料老人ホーム 数千万円が必要

 この五つのパターンについて、どれくらいの費用がかかり、それを賄うには年金収入以外にいくら必要なのかを試算した。

(週刊朝日2022年4月22日号より)
(週刊朝日2022年4月22日号より)

 在宅や特養を利用した場合の1千万円(パターンV)や1200万円(同I)は、先に長尾さんや澤木さんが指摘した金額に近い。ただし、有料老人ホームを利用すると金額は跳ね上がる。どちらか一方が利用(同II、IV)すると年金以外に2千万円以上かかり、両方(同III)だと3千万円を超す。

「夫を在宅で介護する場合、症状が重くなってくると妻の負担が増えるので、最期の施設利用も考えるとパターンI、IIの場合、もう少し費用を見ておいたほうがいいかもしれません。いずれにしても介護を考える場合、お金は多いに越したことはありません。選択肢が増えますから」(岡本さん)

 もっともこの試算、いろいろな条件を設定した一つのケースにすぎないので、自分の収入や希望に沿って数字を変えてイメージを広げてほしい。また特養の場合、要介護3以上でないと入れないことや、大勢の待機者がいることが多く、希望したときに入れないという現実も知っておきたい。

 それにしても、かなりのお金がかかることは間違いない。「介護はピンキリ」は有料老人ホームの広告などで実感できるが、準備するほうはたまったものではない。これでは有料老人ホームは、高値で売却できる自宅がある人などを除けば、「夢のまた夢」になってしまいそうだが、ここからが人生100年時代の老後資金の「懐」が深いところだ。高齢になっても、十分資金を積み増すことができるのだ。

 自助努力の筆頭として挙げられるのは、冒頭のA子さんもしている「年金繰り下げ」だろう。65歳からもらわずに受給を遅らせることで年金を増やす方策。1カ月遅らせるごとに0.7%年金額が増える。しかも4月からの制度改正で上限が5歳延びて75歳まで繰り下げできるようになった。

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