同じくFPの澤木明さんも「1千万円程度」を持論とするが、こちらは自身の介護体験がベースになっている。
「認知症も入った母親を約15年間介護したんです。最初は在宅で、症状が重くなってからは特別養護老人ホーム(特養)に預けました」
◆調査や体験から「1千万円程度」
澤木さんが考えたモデルは、介護期間を10年として在宅と介護施設の期間を半々とするもの。在宅では徐々に症状が悪化するとし、費用も年々上がっていく。特養は待機期間が必要になることが多いため、最初は介護付き有料老人ホームに入り途中から特養に移る。
「母親の介護費用を参考に10年間の数字を積み上げていくと、1千万円程度になります。いろいろなセミナーでこの数字をお伝えしています」
1人800万~1千万円。冒頭のA子さんはいい線をいっているが、在宅や公的施設ではなく民間の有料老人ホームで快適な介護を受けたい人もいる。さまざまな人の参考になるように、もう少し幅広いモデルがほしい。そこで介護と介護施設に詳しいFPの岡本典子さんに平均的な介護パターンと介護費用を教えてもらい、それをもとに「モデル夫婦」を作ってみた。
80歳の夫と75歳の妻がいたとする。年金収入は2人で年間300万円、生活費は月額25万円(年間300万円)とし、生活費では赤字は出ない。夫は85歳から90歳の間、介護状態になり90歳で死亡、妻は90歳から介護を受け同じく5年後に95歳で死亡するとする。
岡本さんが言う。
「高齢期を過ごす住まいには『自宅』のほかにさまざまな施設がありますが、最期の看取りまで受けられる代表的なところとして民間の『介護付き有料老人ホーム』と『特養』を想定しました。有料老人ホームは家賃分の前払い金として500万円、月額費用は25万円としています。首都圏では『中程度』です。また特養の費用は余裕を見て月15万円を見込みました」
とすると、考えられる典型的な介護パターンは次の五つになる。夫は在宅介護で対応し、「おひとりさま」になった妻は特養(パターンI)か有料老人ホーム(同II)で最期を迎えるケース、夫婦2人とも有料老人ホームで介護を受けるケース(同III)、そして一人は有料老人ホームで一人は特養(同IV)、2人とも特養(同V)だ。