谷合が覚えたのは6歳ぐらいで小学校に入る直前だった。
谷合:アマチュア四段ぐらいの祖父に習いました。祖父の家に遊びに行くと、将棋ばっかりやってました。
とはいえ、みんな最初から将棋ばかり、ではない。
中村:水泳や英語の教室に通って、ピアノも少しだけ。サッカーも好きで、自分から進んでやっていました。自分がやりたいと言ったことを、両親は応援してくれる感じでした。
探究心と負けず嫌い
谷合は自宅にピアノがあって、早くから触れた。小学校はお茶の水女子大学附属で音楽関係者の子弟が多く、学校でアンサンブルできた。
谷合:いまでもピアノは続けていて、即興で弾くのが好きです。小学校のときには公文式もやっていました。進んでる人は会報誌の全国ランキングに載るので、それもモチベーションとして頑張って。小6の頃には高校生ぐらいの課程まで進んでいました。
いまは鬼のように強い藤井も、幼い頃には無敵というわけではなかった。地元では、負けるとよく泣く少年として知られていた。棋士の多くにはそうした、負けず嫌いに関するエピソードがある。
将棋を始めたばかりの中村少年は、親戚の子に負けて泣いた。
中村:5歳上のいとこは、ルールを知ってるぐらいでした。自分はちょっと父親と遊んだぐらいなんですけど、自分が勝つと思ってやったんです。それでも年の差があったためか、負けてしまって。それが悔しくて、もっと強くなりたいと。
中村は小2から八王子将棋クラブに通うようになった。中村が尊敬する羽生も育った名門で、多くの有望な子が集っていた。
中村:やっぱり同世代の人たちがいっぱいいたのは大きくて、楽しく将棋を続けられました。同学年ぐらいの自分より強い子、ライバル的な存在の子がいると「もっと頑張らなきゃ、強くなりたいな」という気持ちが起こります。負けず嫌いか、あとは探究心がものすごく強いか。どちらかが大切だと思いますね。
将棋では必ずいろいろな発見があります。それをもっと知りたいと思う探究心。あるいは、この目の前の相手に負けたくないから強くならなきゃいけないとがんばる。どちらも行き着く先は、将棋をいろんな方向から勉強する、ということになると思うんです。