将棋アマチュア三段の腕前を持つタレント・つるの剛士さん。20代から新宿・歌舞伎町にあった将棋道場に通い、その哲学や雰囲気に魅了されてきた。AERA 2022年4月18日号の将棋特集では、つるのさんにインタビュー。将棋の魅力や子育てに役立つ点を語ってくれた。
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将棋に興味が出たのは、小学校のときでした。雨の日だけ学校にオセロと将棋を持ってきていいことになっていて、友だちの間で将棋が流行ったんです。
ただ、本格的にやりはじめたのは25歳くらい。大人になってからでしたね。当時、ウルトラマン関連のイベントで全国をまわっていたのですが、移動が多くて時間がもったいなくて。そんな時、棋士の故・米長邦雄先生が監修された詰将棋ゲームを見つけて、移動時間用に買ったのがハマるきっかけでした。
その後、ネットでも将棋をするようになりましたが、どちらかといえば人対人のほうが好きで、当時、新宿・歌舞伎町の雑居ビルにあった将棋道場によく通っていました。100人以上のおじいちゃんやおじさんたちがひしめき合っていて、部屋はたばこの煙がモクモク。チャーハン食べながら競馬中継を見て……そんな独特な世界観に惚れてしまったんです。
将棋のおもしろさって、勝負はもちろんですが、その場で人の気持ちを察したり空気を読んだりすることに、魅力があると思っています。第六感的な。だから、ネットでもいいけど、できれば人と指したい。
「負け際」にこそ美しさ
歌舞伎町の道場の雰囲気もそうですが、将棋って、とにかくかっこいいんですよ。特に僕がそう感じるのは、負けの美学。負け際に美しさを感じるんです。
プロ棋士なら、最後までいかなくても自分の負けがわかっている。なのに、負けるギリギリまで形を整える。テレビ対局なら、負けがわかっていても視聴者にわかるように最後までしっかり指すときもある。悔しくて悔しくてしかたないはずなのに、最後までビシッと締める。そんな姿が美しいんです。