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 早稲田大学で行われたマーケティング講座で、「生娘をシャブ漬け戦略」という発言をした吉野家の元常務取締役の伊東正明氏が大きな話題となりました。報道によると、地方から来た若い女性が、男性から高い食事を奢ってもらう前に牛丼を中毒的に愛好するようにファン化することの重要性を説く趣旨だったそうです。

 飲食店の戦略として、「人生の早い段階でファンになってもらう」ことの重要性は周知されており、子供や若者をターゲットとしてリピーターになってもらう企画は多くの飲食店で行われています。例えば、ファミレスでオモチャをサービスしたり、回転すし店でフライドポテトやから揚げやラーメンを食べられたりガチャガチャができることなどです。

 伊東氏の発言はあまりにも衝撃的で、あっという間にSNSで大きな話題となり、多くの批判が寄せられました。結果、早稲田大学は講師を降板させる方針を明らかにし、吉野家は伊東氏を解任したと発表しました。今回は、失言の話題性とタイトルについてです。

 YouTuberでもインフルエンサーでも、芸能人でも政治家でも有名人でも、失言はあります。公共の場所での発言には大いに気をつけなければならないのですが、彼らが失言をしてしまうには大きく分けて二つの理由があります。ひとつは、第三者によるチェック体制の欠如です。年齢を重ねたり、社会的な立場がある人物の場合、発言をいさめる相手がいなかったりします。冒頭の伊東氏もおそらくこのパターンなのかもしれません。傾向として政治家にも多いように思います。

 日常的に、業務や会議や打ち合わせ、接待の際などに話す軽口を、いさめる相手がいない立場の方は、公の場でも同じように発言してしまいがちです。彼らには悪意や悪気もなく、平常運転で話した結果、世間の受け取り方が社内や業界内と大きく異なった、という感覚なのでしょう。本人には悪気がないので、何が問題なのかも理解できない、なぜ世間で問題になるのかもピンとこず、言葉狩りにあったような気持ちになる場合もあります。このパターンの失言を防ぐためには、世間的感覚を持つ人がコンプライアンスチェックを行うことが考えられます。そのようなサービスも、今後は一般的になるかもしれません。

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