リアルタイムのファンは30年以上前のことを鮮明に目を輝かせて話してくれるのが印象的だった。同世代には鮮烈に、そして今の若者を魅了するのは「普遍的だから」と話してくれたのは音楽評論家の森朋之さん。

「今の若者にも人気があるのは、ひと言でいえば普遍的だから。尾崎がデビューした時は80年代で、その背景には管理教育があって、親に対して思うこと、教師に対して思うこと、社会に対して思うことがベースにあった。その構図みたいなものは今も何ら変わらない。今も理不尽な校則とかありますし、むしろ、今の方が、その管理教育が厳しい側面もあるのかもしれない。だから、そういうことに敏感な若者には尾崎の曲が刺さるのではないかと思います。特に学校現場が変わっていないんでしょうね。さらに今の若者はSNSが普及して友達同士の同調圧力みたいなものもあるのかもしれないですね」

 また、若い世代のファンが好きな曲にあげる『僕が僕であるために』にもうなずけるところがあると言う。

「昔も今も自分のアイデンティティーはどこだろうみたいなことを思っている人が多いから、若い世代に『僕が僕であるために』が人気なのは、“そこだよな”と思うところがあります。尾崎の歌詞は反抗的と捉えられますが、実は内省的な歌なんですよね。『卒業』の歌詞も校舎の窓ガラスを割るとかの言葉が出てきますが、最終的ゴールは、自分を何度卒業できるかですからね。10代であれだけの楽曲を書いていて天才ですよね」(森さん)

 実は、森さんは中学生時代に尾崎豊のライブに行ったことがあるという。

「私が中学生の時に『卒業』が発売されTROPIC OF GRADUATION(回帰線)ツアーがあり、岡山市民会館でのライブを見に行きました。ライブはお客さんの熱狂がすごかったですね。女の子なんかずっと泣いている。今のライブで、あそこまでの感じのものは見たことがないです。今の若い世代がファンになるのも、今のアーティストに尾崎豊に代わるものがないからなのではとも思います」(森さん)

 まさに唯一無二という言葉しか浮かばない尾崎豊。30年たった今もなお人々をその楽曲で魅了し続けている。(AERAdot.編集部/太田裕子)

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