ウェリンガさんが初めて大谷のことを知ったのは2016年にさかのぼる。ウェリンガさんは、実在の選手を編成してチームを作り、実際の活躍に応じて入るポイントで競い合う「ファンタジーベースボール」というシミュレーションゲームを仲間とリーグを作って、何年もやり続けている。これからメジャーリーグに来て活躍しそうな選手を早めにチームに加えるため、世界のリーグに目を光らせていたが、ダルビッシュ有のような投手を見つけようと日本の野球を調べていたら、大谷の名前が出てきた。しかし、YouTubeで検索すると、出てきたのはホームランをかっ飛ばす大谷の動画だった。
「日本だと投手と打者の両方でやるのが普通なのか」と疑問に思った。しかし、見ていると、大谷が打つのは、たまたまではなく特大のホームラン。「これは絶対に取らねば」と思った。「この日本人選手は次のベーブ・ルースになる」とリーグの仲間に自信満々で言ったら、仲間から「そんな訳ないだろ。良い投手にはなるかもしれないけど、二刀流は日本ではできても、アメリカじゃ無理だ」と鼻で笑われた。
■すべての野球少年のロールモデル
大谷がメジャー挑戦を発表した時は、「下部組織に良い選手がそろっているホワイトソックスを選んでくれるのではないか」という期待もあったが、それはかなわなかった。でも、エンゼルスを選んだ時は、「いつでも球場に見に行ける」と喜んだ。
アメリカに来た大谷をテレビや球場で見た最初の印象は、「子供のような無邪気さがある」だった。あれだけ能力があるのだから、「もっとシリアスで高飛車なのかと思っていた」と言う。しかし、ふたを開けてみれば、いつも笑顔で発言も謙虚だった。
「野球のうまさを抜きにしても、彼のことを嫌う人はいないでしょう」とウェリンガさんは言う。
二刀流は無理だと言う周りの野球ファンに「ムキになって」反論しているうちに、大谷が現役で一番好きな選手になったと振り返る。