作新学院ほどの低迷をしていたわけではないが、智弁和歌山(和歌山)も中谷仁監督の就任で新たなステージに入った印象が強い。甲子園歴代最多となる通算68勝を誇る高嶋仁前監督も最後に優勝を果たしたのは2000年夏で、2012年夏、2014年春、2015年夏と3度連続で初戦敗退を喫している。特に2015年夏に初出場の津商(三重)に敗れた試合では7失策を記録し、浮足立つ姿にショックを覚えたファンも多かっただろう。

 しかしOBで自身も夏の甲子園優勝を経験している中谷が部長となった2017年からチームは再び上昇気流に乗り、2018年春にはセンバツ準優勝。そして、その年の8月に中谷が監督に就任すると、昨年夏には見事21年ぶりとなる全国制覇を成し遂げたのだ。甲子園での成績もさることながら、中谷監督就任後には黒川史陽(楽天)、東妻純平(DeNA)、細川凌平(日本ハム)、小林樹斗(広島)と早くも4人の選手をプロ野球に輩出しており、勝ちながら育てるチームとなっているのも特徴的だ。今年もセンバツ出場は逃したものの、大型右腕の武元一輝(3年)が注目を集めており、昨年に続いて夏の巻き返しに期待がかかる。

 この春、復活の兆しを見せているのが帝京(東東京)だ。春1回、夏2回の優勝を誇り、かつては“東の横綱”とも呼ばれたが、2011年夏を最後に甲子園出場から遠ざかっており、昨年夏を最後に長く指揮を執った前田三夫監督が退任。同校OBで、今年度で37歳とまだ若い金田優哉監督が新たに就任している。そして春の東京都大会では創価に9対2、早稲田実に13対0と立て続けに強豪校を圧倒すると、センバツ出場の国学院久我山にも6対0と完勝。準決勝では関東一に競り負けたものの、エースの高橋蒼人(2年)は登板しておらず、夏に向けての布石とも考えられる。伝統の強打に加えて足を生かした攻撃も目立ち、高橋以外にも力のある投手を揃えている。この夏は東東京でも関東一、二松学舎大付と並んで優勝候補の筆頭格となりそうだ。

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今後の“復活”に期待できる関西の名門は?