逆指名制導入後、高校生の指名に消極的だった巨人が、福留以来、久々に抽選覚悟で獲得に動いたのが、01年の寺原隼人(日南学園)だ。

 夏の甲子園で史上最速の154キロ(当時)をマークした寺原は、11月に台湾で行われたワールドカップのプロ・アマ合同の日本代表にも、高校生として史上初のメンバー入りをはたすなど、将来を嘱望された“金の卵”だった。

 同年限りで勇退した長嶋前監督、原辰徳新監督が揃ってラブコールを送り、寺原自身も「行きたい球団は一つ」と巨人入りを夢みていた。

 だが、ダイエー、中日、横浜との抽選で、同年セ・リーグ2位の巨人は、ウエーバー順で最後の4番目。「残り物には(福がある)っていうからね」とご利益を期待した原監督だったが、3番目のダイエー・王貞治監督が引き当て、目の前で大魚を逃す結果に……。以来、原監督はくじ引きで通算1勝11敗とすっかりツキから見放されてしまう。

 とはいえ、くじ運拙く本命を逃しても、過去は過去と割り切り、獲得した逸材を一人でも多く素質開花させることが、チームを強くする基本であることに変わりはない。“第2、第3の大勢”の出現が待たれる。(文・久保田龍雄)

●プロフィール
久保田龍雄/1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。最新刊は電子書籍プロ野球B級ニュース事件簿2021」(野球文明叢書)。
 

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久保田龍雄/1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。

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