AERAで連載中の「この人この本」では、いま読んでおくべき一冊を取り上げ、そこに込めた思いや舞台裏を著者にインタビュー。
『ずぶ六の四季』は、大竹聡さんの著書。<少し飲むのは得意ではない。飲めばたくさん、が、私のスタイルだ>──酒にまつわる多くの著作を持つ筆者による四季折々の酒風景エッセー。あんかけ焼きそばでウイスキー、梅雨時のレモンサワー、イワシの梅煮で生酒などなど、庶民的ながら最高にぜいたくな酒とつまみの日々につられて「今夜も一杯」となること請け合いだ。大竹さんに、同書にかける思いを聞いた。
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<晩酌のない生活は考えられない><ああ、飲みに行きてえな>──「まん延防止等重点措置」に「マスク会食」と、とかく酒飲みには生きづらい昨今、こんな本が出るとは! とうれしくなってしまう。
大竹聡さん(58)の『ずぶ六の四季』は、2017年からの週刊誌での連載をまとめたものだ。
「よくまあこんなに飲んでいるな、と自分でもあきれました」と大竹さんは笑う。
“ずぶ六”とは江戸時代にできた呼び名で、酔って寝てしまう酔っ払いのこと。全編に飲んで食べてクスッと笑えるエピソードが満載だ。シュウマイに意外に合う日本酒、モツ焼きに瓶ビール……つまみの描写も多く、グイグイ引き込まれるはず。
「無理に大酒を飲んだ話を書いたりするのではなく、日々何食って、何を飲んでいるか、というようなことを書きました。読んで『ああ、そろそろ天豆(そらまめ)の季節だな』というような四季を感じてほしかった」
連載後半はコロナ禍に突入。飲みに行けない中「家飲み」の楽しさにも目覚めた。
「頂き物の長崎・有明のいい海苔(のり)をあぶって、昆布と豆腐で湯豆腐にして、さあ何を飲もうかと。昔は飲んだら全然食べなかったけど、いまは飲みながら女将(おかみ)さんの手元を観察して、家でまねしたり」
が、酒場でしかなし得ないものが人との縁だ。例えば一昨年急逝した坪内祐三さん。