かつての手堅い野球から一変し、今年のドラフト有力候補の強打者である浅野翔吾を2番で起用するなど、現代野球に合った戦い方をしている印象が強い。また昨年12月にはイチロー氏の指導を受けたことでも話題となったが、それを実現させたところにも長尾監督の手腕がよく表れている。今年のドラフトで浅野が上位指名されれば、さらに県内の有力選手の目が高松商に向かう好循環が生まれることになりそうだ。

 名門復活と言えば県岐阜商(岐阜)も忘れてはならない存在だ。2015年春に高橋純平(現ソフトバンク)を擁してセンバツベスト8に進出してからは低迷が続いていたが、2018年に同校OBで秀岳館(本)を3季連続甲子園ベスト4に導いた鍛治舎巧監督を招聘すると、早くも2019年秋には東海大会で準優勝(2020年春のセンバツは新型コロナウイルス感染拡大の影響で中止)。昨年も春夏連続で甲子園に出場し、いずれも初戦で敗れたものの1点差の接戦を演じている。

 複数の力のある投手を揃え、昨年のドラフトでプロ入りした高木翔斗(現広島)など下級生でも力のある選手は早くから抜擢してチームの柱とするやり方は、秀岳館時代と同様であり、それがしっかりと結果に結びついているように見える。鍛治舎監督は今年で71歳という年齢からも長期政権は考えづらいが、今の勢いが続けば甲子園で再び上位進出も期待できそうだ。

 レベルの高い近畿で明石商と並んで存在感を示しているのが市和歌山(和歌山)だ。過去10年間で春4回、夏2回甲子園に出場。昨年は小園健太(現DeNA)、松川虎生(現ロッテ)のバッテリーが揃って1位でプロ入りを果たした。今年のチームも米田天翼、淵本彬仁と2人の力のある投手を揃え、センバツでも2勝をマークしている。バッテリーを中心とした手堅い守りには定評があるだけに、攻撃力がアップできればさらに上を狙えるだろう。その他では県内の有望選手が集まる仕組みが大きな強みである静岡(静岡)、伝統的に公立の強い四国で安定した戦いを続けている鳴門(徳島)なども有力候補である。

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私立優位の状況は今後変わるか