金城さんは名前を変えるのはよくないと思っている。しかしそれを「間違い」だと否定するのではなく、それも生き方の一つとして受け止めなくてはならない。そう考え、「一歩一歩、自分たちが沖縄のままで生きる方向に進む」ため、自身の名字も、沖縄読みの「カナグスク」へ戻すことを決意する。とはいえ、日本人に同化している自分が名前だけ「カナグスク」と名乗っても通用しない。でもいつかは、「カナグスク」という自分の名字と身体を一致させたい。だから今は過渡期として「キンジョウ・カナグスク・カオル」と名乗り、自分と社会に変化を起こそうと考えている。
沖縄人の自分と、日本人の自分。そのどちらにも自信がもてず、沖縄人と日本人の二つを生きていた金城さん。還暦を過ぎてたどり着いたのは「沖縄人として日本人を生きる」という境地だ。関西沖縄文庫には日々、沖縄出身者や沖縄を知ろうとする人たちが通い、熱い議論を交わしている。金城さんは言う。
「ここは『日本の中の沖縄』の最前線だと考えています」
(編集部・渡辺豪)
※AERA 2022年5月16日号より抜粋