東京大学出身の須山(写真:日本相撲協会提供)
東京大学出身の須山(写真:日本相撲協会提供)

 大相撲初の東京大学出身者・須山が、夏場所のデビュー戦を白星で飾った。コロナ禍をきっかけにプロを志望した遅咲きの力士に期待が集まる。AERA 2022年5月23日号の記事を紹介する。

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 大相撲夏場所3日目の5月10日、史上初の東京大学出身力士が国技館の土俵に上がった。文学部人文学科哲学専修在学中の須山穂嵩(180センチ、104キロ、木瀬部屋、24)。新弟子同士が対戦する「前相撲」で、山田海(出羽海部屋、16)を相手に踏み込み良く右を差すと、そのまま前に出て一方的に寄り倒す堂々たる取り口。その後、昨年の全国学生相撲選手権(インカレ)で日本体育大学の団体優勝に貢献した今関(玉ノ井部屋、22)にも快勝するなど、3戦全勝と上々のデビューを飾った。

■大学で相撲を始める

 埼玉県ふじみ野市出身。中学時代は野球部で、さいたま市立浦和高校では「帰宅部」。相撲を始めた東大相撲部で、秘めた才能を開花させた。大きな大会での上位入賞経験はないものの、勝負度胸が良く、まわしを取っての思い切り良い投げや、土俵際で回り込んでの突き落としを武器に、日本大学、東京農業大学、専修大学、早稲田大学など格上の大学の経験豊かな選手を何度も破っている。

 コロナ禍で3、4年生時は大会数が激減。不完全燃焼の思いを抱えるなか、プロ入りを志望した。ネックになったのが25歳未満という新弟子検査受検の年齢制限。“2浪1留”の須山は今年9月に制限を超えてしまう。それでも、思いは揺るがなかった。在学中のまま入門。来春の卒業を目指しながら二足の草鞋(わらじ)を履くことになった。

 東大出身のプロ野球選手は、現役の宮台康平(ヤクルト、26)を含めて6人いる。大洋(現DeNA)でプレーした新治伸治は投手として通算9勝。元中日の井手峻は投手から外野手に転向して通算359試合に出場し、本塁打を1本放った。

 初の東大出身力士である須山には、一人前の力士の目安である十両昇進が大きな目標となる。過去に国公立大出身の力士は4人いるが、いずれも十両昇進は果たせていない。私立の強豪大学で須山をはるかに上回る実績を残してきた力士でも、関取になれなかった者は多い。

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