巡礼行事だけでなく、村人たちが毎日、他者のために祈っていることを実感した。
「17年から3年間、ラダック地方に通って、毎回1カ月くらい滞在したんですが、その間、怒ったりする大きな声を一切聞かなかったんですよ。それはやっぱり、他人の幸せを第一に考えるからそういうふうになるんだろうなと、すごく腑に落ちましたね」
自然が非常に厳しい土地なので、1人では生きていけない現実がある。そういう意味でも、他人を幸せにしないと自分も幸せに生きていけないのかもしれない、という。
三崎さんは撮影した写真を小さな写真集にまとめて、翌年、パーティーの責任者に手渡した。
「撮りっぱなしにはしないで、撮影した写真は必ず、2年目に同じ場所に行って、ありがとうございましたと言ってお渡しする。それが私の方針です。ご飯やお茶の時間にみんなで見て、喜んでもらえました」
■撮影地と関わりのあるもので表現したい
ゴチャックを写した作品はチベット仏教の経典にも使われている『ロクタ』という紙にプリントして5月19日からOM SYSTEM GALLERY(東京・新宿)に展示する。
「私はいつも、撮影した地域に関わりのあるもので表現したいと思っているんです。例えば、カンボジアだったら、そこのNPO団体がバナナの木から作った紙を使うとか。ロクタ紙にプリントすることで自分の思いが少しでも伝わるといいな、と思います」
一見するとゴチャックの荒行と、幸せのイメージとはかけ離れている。それだけに、幸せとは何か、考えさせられる。
(アサヒカメラ 米倉昭仁)
【MEMO】Dane.F.MISAKI写真展「祈りの道」
OM SYSTEM GALLERY(東京・新宿) 5月19日~5月30日