中3でショパン国際ピアノコンクールin ASIA中学生部門金賞を受賞するが、一方で、ロックバンドを組んでドラムを叩き、また自作のボカロや音ゲーの曲、ゲームのプレイ動画をニコニコ動画やYouTubeに投稿して楽しんでいた。
「再生数300回という世界。それでも、リアルとは別の人格を持って、知らない人たちからコメントをもらう。そのやり取りが新鮮で面白くて」
大学受験を直前に控えた高3の12月にはeスポーツの公式大会「コナミ・アーケード・チャンピオンシップ」に出場し、全国ベスト8に入賞。そうかと思えば、大学院時代はフランス留学の直前に、国内のピアニスト登竜門「ピティナ・ピアノコンペティション特級」に出場してグランプリを受賞(優勝)。360度の視界に、壁というものは存在しなかった。
しかし、本人の見方はまた別だった。
「研究者になりたい気持ちはあるけど、ピアノも捨てきれない。でも、クラシックには本気で打ち込んでいなかった引け目がある。そのころのフェイスブックを読み返すと、ネガティブで、悩んでいて、迷走していた自分がいます」
(文中敬称略)(文・清野由美)
※記事の続きは「AERA 2022年5月23日号」でご覧いただけます。